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小茂根福祉園 2nd
カテゴリー:TURN LAND
実施年度:2023年度
参画施設・団体
板橋区立 小茂根福祉園
住み慣れた地域での私らしい暮らしを支援する知的障がい者通所施設。
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小茂根福祉園は、東京都板橋区にある知的に障害のある方の通所施設。生活介護サービスと就労継続支援B型サービスがある。一人一人がかけがえのない個性豊かな社会の一員として「私らしく」住み慣れた板橋の地で、普通の暮らしができることを実現している。自分のやりたいことにチャレンジしたり、さまざまな人との関わりを通して人とのつながりを感じたりすることで、豊かな人生をおくれるよう支援している。
活動紹介
世界観を一緒に生きてみる散歩プログラム
小茂根福祉園は、2016年から大西健太郎とのアートプログラムを継続的に実施してきた経験があり、今年度はその変遷を運営面とプログラムの成果を見比べながら園長と職員みんなで振り返るところから始まった。経験値が増えたことで、直接関わったことのある職員たちがプロジェクトの意義を語る言葉も豊富になってきており、今年度の挑戦目標と運営面での懸念を具体的に話し合える状況がつくれていた。そのため、しっかりと狙いを持って職員がプロジェクトを先導することができた。また、外部のコーディネーターが入ったことでアーティストと職員の距離も取りやすくなり、アーティストがプログラムの内容に集中できていた。
プロジェクトメンバー
活動記録 散歩道中ートトトポー「風の通り道」
プロジェクトの動き
2023年
- 6月1日
- 顔合わせと現状共有(職員、事務局)
- 6月20日
- 企画構想のための振り返り(アーティスト、コーディネータ、職員、事務局)
- 7月24日
- 運営会議(コーディネータ、職員、事務局)
- 8月14日
- 企画構想会議(アーティスト、コーディネータ、職員、事務局)
- 9月7日
- 情報共有会(アーティスト、コーディネータ、事務局)
- 企画構想会議(アーティスト、コーディネータ、職員、事務局)
- 9月12日
- 実施検討会(アーティスト、コーディネータ、職員、事務局)
- 9月27日
- 情報共有会(アーティスト、コーディネータ、事務局)
- 10月13日
- 企画構想会議(アーティスト、コーディネータ、職員、事務局)
- 10月18日
- 11月18日
- 運営会議(コーディネータ、職員、事務局)
- 11月22日
- 運営会議(アーティスト、コーディネータ、職員、事務局)
- 12月7日
2023年6月20日(火)16:00~18:00 会場:小茂根福祉園
企画構想のための振り返り
これまでの活動をアーティストと振り返る
小茂根福祉園に2015年(※)から通い続けているアーティストの大西健太郎が実施してきた数々のアートプログラムを振り返り、今年度の活動方針を職員とアーティストがともに考える機会をつくった。
大西がこれまでのプログラムについてスライドを使って紹介をすると、職員たちは当時を振り返り「最初は理解できなかった」「やっていることはわからないが大西さんと関わること自体は楽しい」「大西さんが考えることは自分たちには思いつかないからTURN LANDプログラムが終わった後どう活動を続けられるかわからない」「シッチョイサ!(即興で歌をつくり掛け合うプログラム)は日常でも利用者とのコミュニケーションに活用している」など、職員一人一人が言葉にしづらいアートプログラムの魅力を戸惑いや不安も含めながら自分の言葉で語った。
※ 前身のTURN事業の一環で、小茂根福祉園に通い職員や利用者との活動・交流を継続してきた。
これまでの活動を改めて振り返ることで、それぞれのプログラムの意義や可能性を言葉にする機会となり、当時参加していない職員たちと経験を分かち合う場にもなった。今後について、職員からは「TURN LANDプログラムの活動を通して地域と関わりたい」「(利用者が)ただそこにいるだけで価値があるようなプログラムをやってみたい」、大西からは「今まで一緒にやったプログラムを活用して、小茂根福祉園の活動として継続可能な形、地域社会にもう一歩踏み込んだ形を見い出していきたい」といった想いが共有された。
2023年9月12日(火)10:30-15:00 会場:小茂根福祉園・近隣エリア
実施検討会
地域リサーチ
昨年度は利用者の居場所づくりワークショップを数回行い、演劇パフォーマンスの形にして施設内で上演を行った。7月、8月の企画会議を通してそれらを振り返り、今年度はプログラムを施設の外へと広げるため、どんな展開方法が小茂根福祉園に合うか、職員とアーティストの大西とコーディネーターの笹が意見を出し合ってきた。開催時期や参加する利用者の特性、利用者同士の相性などを考えて、実施の方向が見えたのが「散歩」の形での上演だ。
散歩の試みとして9月は、職員が参加する利用者をリストアップして一緒に下見をすることになった。10月に歩くコースを決め、モニター募集をして11月に体験をしてもらい、演劇を実施する流れだ。上演に参加する利用者を選ぶ際の工夫として、例えばボケ・ツッコミのような組み合わせの視点で選ぶと演劇性を生み出す、といった実施のポイントも少しずつ話し合ってきた。
今回は、利用者2名、職員2名とアーティストの大西、コーディネーターの富塚・渡邉が施設の外へ実際に出て、近隣の通りや公園を歩き、利用者と職員と意見交換をしながら企画の内容を練った。職員からは、上演を1日2回の実施に留めないと、利用者を含め参加者の体力がもたない、との意見。電動車椅子を使用している利用者の進むペースがとても速く、参加者がその速さについていこうとすると、「散歩」というより走り続けることになってしまうのだ。利用者の動きや歩く速さ、立ち止まる場所や回数など、実施内容を調整する必要を感じられる機会となった。
2023年10月18日(水)10:30-15:00 会場:小茂根福祉園・近隣エリア
企画実施 散歩プログラム:職員向け
戯曲の読み合わせと散歩を体験する
散歩プログラムの実施に向けて、アーティストの大西が戯曲を書いてきていた。戯曲のタイトルは「風の通り道」。散歩プログラムは前身のTURN事業から小茂根福祉園内で大西たちが行っている「こもね座」の活動の一環で、昨年度の施設内での上演から形式を変えて展開する。散歩と読み合わせで構成し、参加者が利用者や職員と一緒に散歩をする様子を演劇として楽しむ内容だ。散歩の始めと終わりや途中の休憩時間にこの戯曲のセリフを1行ずつ順番にみんなで朗読していく。
大西は職員と共に読み合わせをする場所や散歩のルートを選び、この日一連の流れを試した。職員は読み合わせをする理由が掴めない様子だったが、実際に朗読してから散歩へと動き出してみると、朗読によって散歩の時間が充実する感覚を掴んでいった。そして職員たちは場面ごとに起きたことを積極的に記録し、次の定例職員会議で今回参加していない職員と内容を共有するための映像資料を作ることにした。
2023年12月7日(水) 10:00- 11:20 13:30- 14:50 会場:小茂根福祉園・近隣エリア
企画実施 散歩プログラム:一般向け
こもね座 散歩道中<トトトポ> 戯曲「風の通り道」
職員や利用者たちとアーティストの大西が意見を交わして内容を詰めてきた今年度のこもね座上演。10月の職員に向けた散歩プログラムの実施を経て、一般の参加者を若干名募った。大西が2種類の戯曲「風の通り道1・2」を書き、午前・午後と実施するため職員と施設内の所属が異なる利用者を組み合わせた2チームを作った。
当日は参加者と、出演者となる職員と利用者とスタッフを合わせた十数名が、施設内の一角に集合。戯曲の台本冊子を受け取ると、集合した場の様子と地続きに劇が始まっていく。戯曲のセリフを一人ずつ読み、隣の人へと回していった。始まりの場面が終わると、次の場面に向けて外出を促され、利用者の一人と大西が先導して屋外への散歩に出かけた。
全員が台本を手に持ったまま、交代でリアカーを引いて近隣を歩き進む。住宅街の道中には運送会社の営業所や公園などがあり、風景を見渡しながらついていく。公園では、戯曲内のト書きの通りに一休みし、その場面が終わると、また次の場所へ移動。ゆっくりと40〜50分ほど近隣を巡り、施設へ戻った。その間には、出演者の声や動きが徐々に散歩に馴染んでくる。小道具のこもね座の行燈を持って前を進む利用者の姿は、すっかり座長のようだった。
施設に戻り、初めに集まった場所に座って、最後の場面を朗読をする。戯曲を読み終え、台本を閉じて上演終了となる。全員が一言ずつ印象に残った部分の感想を挙げていく。「戯曲の意味を読み直してみたい」「歩いてみておもしろい体験だった」「利用者さんがこれ好きなんだな、ということがわかった」など。出演者から大西へ伝えたいことも出てきて、みんなで言葉を共有する。その後、参加者はアンケートに思い思いに感想を記入をして解散となった。