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だんだん 2nd

カテゴリー:TURN LAND

実施年度:2023年度

    参画施設・団体

    気まぐれ八百屋だんだん

    八百屋や寺子屋、こども食堂をはじめ、みんなの居場所と出番を作り出す、民間型の文化センター。

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    だんだんは、八百屋として立ち上がったが現在は、こども食堂、読み聞かせ、学生向けのお金の勉強会、ぽわ〜んとcafe(ジェンダーウェルカム)、産前産後保健室(初めてのお灸)、男子の料理教室、「せっちゃんcafe」など様々なイベントを開催。みんなの居場所と出番を作り出す、大田区にある民間型の文化センター。
    近隣の「大田区立池上福祉園」と「ステップ夢」と連携してプロジェクトに取り組む。

    一般社団法人ともしびatだんだん
    気まぐれ八百屋だんだん 公式ウェブサイト

    https://www.tomoshibiatdandan.com/

    大田区立池上福祉園

    重度の知的障がいがある方の、生活の充実と地域での社会的自立を目指す施設。

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    主に重度の知的障害がある方に、日中活動の場を提供し、日々の生活の充実を目指す施設。地域での社会的自立を目指して、生活、作業、健康、余暇等の支援を行っている。

    大田区立池上福祉園
    公式ウェブサイト

    https://ota-koyokai.or.jp/ikegami/

    ステップ夢

    アルコール依存症の方を主な対象として作られた社会復帰・社会参加の訓練施設。

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    大田区ではじめてアルコール依存症の方を主な対象として作られた社会復帰・社会参加の訓練施設。地域の精神科医・ソーシャルワーカー・保健婦・依存症本人の方々の運動によって作られ、都と区の補助金で運営されている。アルコール依存症の方だけでなく、さまざまな精神疾患を持った方も、社会参加・社会復帰を目ざして通っている。

    ステップ夢
    公式ウェブサイト

    http://www.hasunuma-kitchen.com/stepyume/annai.html

    活動紹介

    仲間にアーティストがいる時間をつくってみる

    関わる人々の素直な意見を引き出しその場にいる人とそれを分かち合うための時間をつくりたい、という想いが前年度の経験から生まれた共通の動機だった。そこで話し合いから生まれたのが「池上わがまま準備室」というアイデアだ。まずはプロジェクトメンバーのイメージを一つの出来事として具体化させるために「準備室」という集いを毎月1回設けることを決めた。すると、プロジェクトメンバーの気ままな妄想や欲望が自然と絡まり合い、次第に「わがまま」を収集するポストをつくるというアイデアが形になっていった。人々の夢や希望に通じる沢山の可能性を秘めたものとして「わがまま」を歓迎する場をつくる試みである。

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    物づくりのスペシャリストである美術家の青木亨平が、投函する度「わがままだな〜」とか「なるほどー」といった音声が鳴る装置を3Dプリンターとプログラミングを駆使してつくり、そこを補完するような形でだんだん事務局の澤田有司が新聞紙工作の得意な知人に頼んでボックス部分をつくった。それと同時にアーティストの藤田龍平がわがままを記入するためのワークシートをつくるような形でメンバーの特技を活かしながら一つの作品が出来上がっていった。そして最後に、池上福祉園の職員から「園祭に用務員として参加してほしい」と声がかかり、藤田が以前吐露した、施設の用務員をやってみたいという願いが叶った。園祭では「わがまま記入用紙とわがまま回収ポスト」を設置し、藤田はマイクを持って突撃インタビューをして、訪れた人々から「普段言えない思いの丈」を引き出した。一人一人が自分のビジョンを表現することで開放的な空気感を堪能する機会を実現した。

    プロジェクトメンバー

    活動記録 池上わがまま準備室  

    プロジェクトの動き

    2023年

    2023年7月6日(木)16:30~18:30 会場:池上福祉園

    企画構想会議   TalkTreeWORKSHOP®

    ツリー(Talk Tree)を作りながら今年度の活動を考える


    昨年度、大田区の同じ地域で活動する気まぐれ八百屋だんだん、池上福祉園、ステップ夢は、3者でTURN LANDプログラムに参加した。今年度の活動をスタートする前に、「TalkTreeWORKSHOP®」(※)を実施。昨年度の振り返りを通して、これからのことについて話し合った。
    昨年度TURN LANDに参加して思ったことは、「多くの人や、素晴らしいアイデアと出会えた」「アートはすでに(自分たちの)日常にあると感じた」「作る目的があってもなくても良い」など。日頃感じている社会課題としては、「隣近所に住んでいる人がどんな人かわからない」「孤立化」「社会構造の複雑さ」「多様化していく社会でどう個が生きるか」といった、言葉が出てきた。また、活動内容も組織体制も違う3者が合同でアートプロジェクトに関わることの難しさについて、意見が交わされた。

    最初は「どうプロジェクトを始めたらよいかわからず不安」という声も出たり、緊張感のある雰囲気だったが、手を動かしながらアイデアを出し合っていくうちに和やかに話が進んでいった。
    根っこや土の部分には、昨年度「プロジェクトを実施して見えた変化」「日頃感じている社会課題」があり、上にいくにつれて「理想の社会」「どんなアーティストとどんなプロジェクトをしたいか」など、これからの希望についての言葉が貼られている。
    気まぐれ八百屋だんだんからは澤田有司、 池上福祉園からは宮﨑裕司、金子航、そしてステップ夢からは大内伸一が参加。

    これからどんな活動をしていきたいかについては、昨年度アーティストたちと考えたアイディアを継続して実施していきたいという声も。青の付箋=「価値を届けたい人」には、「大田区の人」「街の人」と書かれ、地域を拠点にした展開のイメージを共有した。

    ※ TalkTreeWORKSHOP®は、組織や人を1本の木に見立て、自分たちの活動が誰のために、何のためにあるかについて考え、積極的なコミュニケーションを促すことを目的としたもの。Talk Treeを考案した加藤未礼がファシリテーターを務め、今年度のプログラム参画施設・団体でそれぞれ実施している。

    2023年9月27日(水)13:00-14:30 オンライン

    企画実施 池上わがまま準備室 意見交換会

    池上わがまま準備室が始動


    だんだんの澤田、池上福祉園の金子、宮﨑、ステップ夢の大内、アーティストの藤田と青木が一緒に考えている企画は、「池上わがまま準備室」と名付けることに決定。自分のやってみたいことを敢えてわがままと呼んで、「わがまま記入用紙」に書き、「わがまま回収ポスト」に投函してもらう。本当にやれるかわからないけれど、やりたいことに制限を設けず表に出してもらって、みんなであーだこーだと話し合うことそのものが「わがまま準備室」なのだ。

    藤田からは「わがまま記入用紙」が提案された。用紙には、わがままを記入する欄のほか、実現するための予算記入欄もある。「わがまま」を遠慮なく大いに書くことが大事なポイントだ。ポストに入れられた用紙は、ファイリングをして保管していく。
    他の企画メンバーからは、事前に用意してきた「わがまま」の提案があった。金子は、池上地区を色分けする、屋台を置く、カルタを作るなど5つの「わがまま」をイメージイラストで提示。それについてみんなで話していくうちにアイディアはどんどん膨らんでいった。「それぞれプログラムとして実現できそうだ」と藤田もコメントして、話は盛り上がっていた。また宮﨑は、「池上わがまま準備室」の自分なりのイメージをプレゼンテーション形式の資料で紹介。プログラム説明の言葉に特にこだわり、「わがまま」とは「自分が好きに関わる」ことではないか、と語っていた。

    オンラインでの意見交換の様子。
    「どういたしまして」の訳語の”It’s my pleasure.”を、「自分が好きに関わる」という意味に捉えた宮﨑。この準備室を「わがまま」=「好きに関わること」と変換して考えることから始めてみようと提案した。
    藤田が提案する「わがまま記入用紙」。
    地域の中で本当はこんなことを……。”わがまま”の内容が自由に書ける(描ける)余白が大きい。そこに、手伝ってほしいこと(人)、必要なもの(予算)を記入する項目を加えた。

    話し合いが進む中、「ここで言う『わがまま』というのは、誰のわがままかをはっきりさせなくてもいい。『私は〜』と主語をつけなくてもいい」と藤田は説明。「大切なのは『わがまま』を言える状況があること。企画運営をする我々はその状況をつくるアプローチを考えていきたい」とみんなで共有した。

    その後、「わがまま」を引き出す難しさや、その言葉が持つイメージを改めて捉え直す必要性なども話し合われた。また、青木はすでに「わがまま」を収集する「わがまま回収ポスト」を試作していると明かした。みんなからは「わがまま回収ポスト」を各施設に設置したいという意見も出ていた。さらに「ポストを活用してもらうためにはどうしたらいいか」ということも議論されて、結果として投函した時に音声が出るような仕掛けを考えていくことになった。

    2023年10月20日(金)14:00-16:00 会場:ステップ夢

    企画実施 池上わがまま準備室 ステップ夢にて利用者との意見交換

    「池上わがまま準備室」への思いと仕組みを説明


    アーティストの藤田と青木がステップ夢を訪ね、「池上わがまま準備室」でやろうとしていることについて利用者にプレゼンテーションをし、意見交換を行った。

    ステップ夢で、アイデアを利用者に伝える藤田(中央)。

    まず、試作品のわがまま回収ポストを見せながら、「池上わがまま準備室」への思いと仕組みを説明することから始めた。企画を考えたきっかけや、地域の人の思いを汲み取るためにどうしたら良いかというアイデアなどを共有した。「わがまま」を書くことで、「自分は本当はこんなことを思っているんだ」と気づいてほしいことを、例を挙げながら丁寧に伝えていた。

    藤田が試作を続けている「わがまま」を記入する用紙。

    記入用紙には「公開したい/公開したくない/思いついただけ」の記入欄が設けられている。ラジオや新聞投稿のように公開したり、書かれた内容を映像やアニメーションにして共有したりする可能性もあることを、藤田と青木が伝えた。また、「わがまま」を実現していく過程に面白味があることや、利用者と一緒に「やりたいこと」を考える装置としてアートが機能したら良いと思っていること、そして、あわよくばこのポストが地域の(暮らしの)セーフティーネットになるかもしれないことなどを語り、みんなの「わがまま」が集まって来るのを楽しみに待ちたいと二人は意気込んだ。

    やってみたいこと・誰かにしてほしいことなど、それぞれの「わがまま」を利用者に記入してもらった。
    利用者一人一人の話を丁寧に聞く藤田(左)と青木(中央)。
    青木の持参した試作のポストは、ポストの口に用紙を入れると、音声が出る仕組みになっている。現場でのやり取りから、形状や仕組みについて見直すべき点も見えてきた。

    思いや仕組みを伝えた後、利用者に書いてもらった「わがまま」に藤田と青木がコメントをしていった。「うまい棒で家を建ててみたい。タバコで建てるのもいいかも?!」という内容には、思っているだけの絵空事でもいいということを伝えた。また「自分のわがままはお金がかかるから、言いたくても言えない」という意見には、必要な金額も書いてみてもいいことを知らせた。
    なかなか書くことが思いつかない利用者には、「スケッチとして描き出してみると次につながるかもしれないよ」とコメント。すぐに無理と諦めてしまうのではなく、具体的にイメージする時間を楽しむことも提案した。すると、「困ってること、必要なことでもいいんですか?」との質問が挙がり、「電子レンジを上にあげたい」「蒲田地域にトイレの数を増やしてほしい」「最近はお母さんが料理を作ってくれるけど、以前していたように本当は自分で料理をしたい」など、具体的なやりたいことが引き出されていった。

    利用者との意見交換を終えた後、池上福祉園職員の金子やだんだんスタッフの澤田と合流。ポストの試作を彼らにも披露したところ、澤田から「新聞紙工作の手法で箱を作りたい」と意見が出て、その「わがまま」を実現しようということになった。
    また、別日のオンラインでの準備室では、池上福祉園職員の金子からの「わがまま」(要望)で、約1ヶ月後に開催される池上福祉園の施設行事であるフェスタ(園祭)に藤田と青木、澤田が参加することになった。プロジェクトメンバーが施設行事に参加して楽しめるかどうか、さまざまなアイデアを出し合い、真摯に検討した。

    池上福祉園職員の金子(左)とだんだんスタッフの澤田(中央)に試作のポストを説明する藤田(右)。

    photos: Ayaka Umeda
    あれこれと飛び出す「わがまま」を聞き、イメージを掴もうとする澤田。

    2023年11月25日(土)10:30-14:30 会場:池上福祉園

    企画実施 池上福祉園にて「いけいけハートフルフェスタ」に参加

    用務員になりきり池上福祉園のフェスティバルに参加


    池上福祉園で毎年開催される「いけいけハートフルフェスタ」にアーティストの藤田と青木、だんだんの澤田が「用務員」になりきり参加した。以前、藤田が池上福祉園を見学した際に言った「用務員として施設にいてみたい」という「わがまま」を池上福祉園の園長の宮﨑が拾って歓迎していたことからこの企画は実現した。

    それぞれが用務員として心地よく振る舞えるように、作業服を着たり、オリジナルのキャップをかぶったり、インタビューマイクを持ったりとコスチュームや小道具を用意した。金子が準備した「用務員の仕事例」が記入された当日のタイムスケジュールを片手に、朝のミーティングから片付けまで、様々な業務をこなしながらその場に集うたくさんの人々とコミュニケーションを楽しんだ。

    作業着のポケットに来場者へインタビューするためのマイクを挿してスタンバイする藤田。
    新聞紙工作で作ったサンバイザーをかぶって張り切る澤田。
    つなぎを着てスタッフ証を下げ、藤田たち「用務員」の動きを「監視する役」に徹する青木。
    「わがまま」を回収するポストを肩から下げる藤田。ポストの横には「わがまま」を記入する用紙と鉛筆が用意されている。
    毎年、利用者やその家族、地域の方などが多く集まる「いけいけハートフルフェスタ」。
    用務員に紛した藤田が施設内外をくまなく歩き回る。
    「あなたのわがままを教えてください」と来場者にインタビューして回る藤田。
    用務員のタイムスケジュール表に記された「動物とのふれあいコーナー」に出向く青木。
    来場者が記入した「わがまま」を集める。
    用紙をしっかり握りしめて、回収ポストに入れに来る来場者。投函すると音声が出る仕組み。
    大人にもこどもにも「わがまま」インタビューを続ける藤田。
    タイムスケジュールを確認しながら職員にコーナーごとの特徴や話を聞いて回る青木。
    施設内ではスタッフだと認識してもらい、利用者や来場者の方に遠慮なく声をかけられた。
    記入した用紙を回収ポストに入れに次々とやってくる来場者。音声センサーの調子が悪い時は後ろで澤田が呟いた。
    ポストの投函の仕方を丁寧に案内する澤田。回収ポストを設置した場所で用紙に記入したり、スタンプを押したりできるようにして、来場者が積極的に自分の「わがまま」を投函するよう工夫した。
    窓ガラスにチョークで描かれた「わがまま」の文字。
    昼休憩の合間、用務員に扮する藤田・青木・澤田に声をかけに来た園長の宮﨑。
    金子の計らいで、アーティストたちに特技を披露する職員。
    フェスタ中にハートのコラージュを作りあげた池上地区民生委員・児童委員の皆さん。用務員に扮した3人はお祭りの出し物であるお菓子釣りや、ヤギやポニーとのふれあいコーナーなどにも参加し、そこにいるスタッフや利用者、来場者に声をかけコミュニケーションを楽しんだ。


    池上福祉園の利用者による合唱・合奏パフォーマンス。

    澤田たちもパフォーマンスを積極的に盛り上げる。
    隣のワークショップコーナーを経由して、スタンプでデコレーションされた思いもよらない記入用紙が仕上がってきた。
    集まったわがままを読み合う園長の宮﨑(左)と青木(右)。
    フェスタが終わって、片付けまでを満喫する藤田(左)と青木(右)。

    photos: Ayaka Umeda