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はぁとぴあ原宿 2nd

カテゴリー:TURN LAND

実施年度:2023年度

    参画施設・団体

    渋谷区障害者福祉センター はぁとぴあ原宿

    知的障害者・身体障害者を対象とする入所支援、通所の生活介護や児童発達支援などを行う福祉施設。

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    はぁとぴあ原宿は、施設入所支援、生活介護(通所)、 短期入所、日中一時支援、児童発達支援などの支援を提供する渋谷区の中核となる障害児者支援施設。 生活介護事業では、障害者アート活動への積極的参加と、理学・音楽療法などのリハビリテーション支援に取り組んでいる。また感覚統合とソーシャルスキル訓練を柱とした児童発達支援も行っている。

    社会福祉法人 友愛学園
    渋谷区障害者福祉センター はぁとぴあ原宿 公式ウェブサイト

    https://www.yuaigakuen.or.jp/office/heartpia-harajuku/

    活動紹介

    現れては消える愛おしい出来事を紡ぎ味わうプロジェクト

    アーティストの永岡大輔が考案した「原宿荒野」は、はぁとぴあ原宿の屋上を拠点に、荒野のようにさまざまな植物が自生しては消えていくことを繰り返しながら、じっくりとその場に合った何かが育っていく状況を目指し、動き始めまた。昨年建てた小屋も夏の強い日照りと雨風が吹きさらす過酷な状況に朽ち、撤去を余儀なくされ、都会のど真ん中にも自然の脅威を間近に感じられる屋上の特性を身に染みるように学ばされる機会となった。

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    その一方で、コロナ禍で先送りになっていた「似顔絵」の野外開催が叶い、はぁとぴあ原宿メンバー(利用者)が施設内外の人々と「似顔絵」を通して一人一人と向き合う豊かな時間を持てたり、これまでの活動でできた縁で「バナナの苗」をもらいに行くバスツアーができたりと施設外の人々との緩やかなつながりも生まれた。また、アーティストの岩田とも子をプロジェクトメンバーに迎え、「太陽を近く感じる場所」としての屋上の新たな可能性に、みんなで想いを馳せた実り多き年になった。

    活動記録 「原宿荒野」と似顔絵と  

    プロジェクトの動き

    2023年

    2023年7月6日(木)16:30~18:30 会場:はぁとぴあ原宿

    企画構想会議   TalkTreeWORKSHOP®

    ツリー(Talk Tree)を作りながら今年度の活動を考える


    原宿にある障害児者支援施設はぁとぴあ原宿に通うアーティストの永岡大輔は、前身のTURN事業の期間も含めると4年ほど活動を継続している。コロナ禍で対面の活動ができない際にはオンラインで、そして昨年度はリアルで、利用者が職員や外部ゲストの似顔絵を描く活動を行ってきた。
    そんな交流期間の長いはぁとぴあ原宿と永岡が、TURN LANDプログラムの2年目を迎えるにあたり、改めてこれまでを振り返りつつこれからの展開を一緒に考えていくために、「TalkTreeWORKSHOP®」(※)を実施した。

    ワークショップに参加したアーティストの永岡大輔(右)とはぁとぴあ原宿職員(左)
    屋上も地下もあるはぁとぴあ原宿の建物をイメージして、縦に長く繋がっている木を作った。
    地域の課題(オレンジ色の付箋)には「地域の人が何の施設かわかってない」「生活者の気配が少ない」といった、原宿に位置する施設ならではのコメントが。「届けたい想い」を表す実の部分には「幸せな気持ち」「幸福感」という言葉が出てきた。
    長い期間実施していても、関わりのある職員以外の職員に活動を共有するのが難しいという現状も。今年度はより職員や地域の人との関わりを増やしていきたい、という意見が出てきた。

    今年度は秋に開催される施設のお祭りで、これまで継続してきた「似顔絵」をやりたいという具体的なアイデアが出た。また、施設の屋上には畑があり、都心とは思えないゆっくりとした時間が流れている。昨年度はこの屋上にドーム型の小屋を作ったので、今年度はそれを活用しながら活動を展開していきたいという意見が交わされた。

    ※ TalkTreeWORKSHOP®は、組織や人を1本の木に見立て、自分たちの活動が誰のために、何のためにあるかについて考え、積極的なコミュニケーションを促すことを目的としたもの。Talk Treeを考案した加藤未礼がファシリテーターを務め、今年度のプログラム参画施設・団体でそれぞれ実施している。

    2023年9月19日(火)10:00~12:30 会場:はぁとぴあ原宿、SHIBAURA HOUSE

    企画実施 バナナの苗をはぁとぴあ原宿に運ぶバスツアー

    芝浦から原宿へ、バナナの苗の大移動〜はぁとぴあ原宿の屋上に迎え入れる


    はぁとぴあ原宿の屋上には、菜園がある。職員と利用者が共に、玉ねぎをはじめ、オクラやトマト、ナスなどさまざまな野菜や植物を育てていて、施設の前で販売したり、地域のお店に卸したりしている。昨年度はこの屋上を、さまざまな可能性の種を育てる原宿の「荒野」にしたいというビジョンを持って、アーティストの永岡がはぁとぴあ原宿に通い、施設と共にさまざまな活動を行ってきた。プロジェクトメンバーが集まって、似顔絵活動のほか、こんなことをしてみたい、あれもやってみたいとアイディアを出し合う中の1つに、「バナナを育てる」という案があった。
    バナナは熱帯の植物だが、日本でも環境によっては栽培可能だという。コーディネートスタッフが関係する、芝浦にあるコミュニティスペースSHIBAURA HOUSEで昨年からバナナを育て始めていて、実も収穫できたことを紹介すると、永岡が「それいこう!」と判断し、そのバナナから株分けしてもらうことを決めた。はぁとぴあ原宿の屋上に移動するため、施設に流れる時間感覚を大事にしながらあまり急がずに計画を立て、半年かけてついにそれを実行する日がやってきた。

    バナナの移動手段は利用者の送迎バスを特別に使うことに。朝、施設に集合して、利用者3名と職員、永岡、スタッフがバスに乗り込み、道中車内でおしゃべりをしたり利用者が得意の歌を聞かせたりしながら目的地に向かった。これまでコロナ禍で制限されていたことも重なり、利用者の外出は貴重な機会となった。SHIBAURA HOUSEに到着した後は、バナナ育成を担当している、通称「バナナ先生」こと佐々木巧海さんに育て方をレクチャーしてもらい、苗をバスに積み込んだ。

    はぁとぴあ原宿の送迎バスを利用して芝浦まで移動。歌が上手な利用者の一人は、声モノマネも得意。似顔絵活動では、歌を歌ったり職員の喋り方のマネをしたりする。
    SHIBAURA HOUSEに到着して、バナナについて話を聞いているところ。プロジェクトメンバーの利用者たちと職員と永岡がバナナを囲む。
    とても暑い日の移動だったので、冷たい飲み物でちょっと一息。
    車椅子が乗車するバスの後方からバナナの苗を積み込む。
    はぁとぴあ原宿に着いて、なんとか積み込みできたエレベーターで、4階の屋上まで移動。株分した苗といっても、すでに3メートル近くに成長したバナナは、エレベーターに入らないのではという心配もあったが、無事に載せられた。
    屋上に到着したバナナ。青空の下、日差しをたっぷり浴びて気持ちよさそう。芝浦の街中にあった時は、都会のビル群とのギャップで特別に目立っていたバナナだが、はぁとぴあ原宿の野生的な屋上では、バナナはとても自然に、生き生きとして見えた。
    「植物は環境に合わせて適応しようと変化するから、熱帯の植物を育ててみるのも面白いと思う」という永岡に対して、「屋上の四隅にフルーツを植えて育ててみたかった」という職員の思いが語られた。

    photos:Ayaka Umeda

    次回の活動では、小さい鉢に入っているバナナの苗を、屋上に植え替えする予定。バナナをきっかけに、色々な人を施設の外から招いて交流することも企画中だ。

    2023年9月21日(木)10:00~14:00 会場:はぁとぴあ原宿

    企画実施 はぁとぴあ原宿の活動に参加

    アーティストの岩田とも子がこどもとはぁとぴあ原宿で半日過ごす


    アーティストの岩田とも子が、1歳になるこどもとはぁとぴあ原宿を訪れた。施設には、「藍」「織」「麦」「紙」「歩(あゆみ)」などの工房があり、利用者がそれぞれの工房で日中活動を行っている。岩田は午前中、「歩」工房の利用者と一緒に代々木公園まで行って散歩し、午後は「紙」工房で紙漉き作業を見学した。
    岩田はその中で見つけたいくつかのキーワードに沿って、観察メモを残した。メモには、利用者の歩く速度について職員が発した「ペースメーカー」という言葉に、こどもとの日常を重ね合わせて感心する様子が記されている。ペースを作ること、歩くこと、こどもの変化など、半日を施設で過ごした岩田の思考の変遷を読むことができる。

    岩田による感想メモ → PDFはこちら

    代々木公園での散歩は日々の活動。はぁとぴあ原宿が位置するキャットストリートを通って表参道から公園へ向かっているところ。
    「歩」工房を担当する職員(左)とアーティストの岩田とも子(右)。
    公園の中を突っ切っていく。
    代々木公園で岩田が拾ってきたサルスベリの花、落ち葉、松ぼっくり。
    「紙」工房での作業の様子を見学。紙をローラーで移す作業はおよそ10秒が目安。そのカウントは座った状態の腕振り10回で数えていた。


    2023年10月21日(土)10:00~15:00 会場:はぁとぴあ原宿

    企画実施 はぁとぴあ祭にて「永岡大輔さんとの似顔絵」活動

    似顔絵描きと歌のコーナー


    似顔絵描きは、前身のTURN事業を経て、オンラインでも試みてきた取り組み。コロナ禍が落ち着き、ようやく念願の野外での開催が叶った。
    はぁとぴあ原宿正面玄関の外に、長机と椅子を置き、職員が作成したプラカードを掲示し来場者を迎えた。利用者3名が参加し、うち2名が描き手となり、1名がキーボードを弾いて演奏で盛り上げる。

    午前の活動
    これまで描いてきた似顔絵を頭上に吊るし、タイムスケジュールやこれまでの活動に関する案内を掲示した。
    似顔絵を描く利用者たちとその間で励ますアーティストの永岡。二人は少し気合いの入った面持ちで、開始時間前にコーナーの様子を見てから再び戻ってくると、永岡特製の椅子に座った。似顔絵を描く時は、向かい合って座る来場者の表情をじっと見入ってから、マジックペンを走らせる。
    似顔絵を描いている間に、奥の机では利用者が得意のキーボードで、ブギウギなど昭和歌謡や、童謡、演歌と幅広いジャンルにわたって途切れなく即興演奏を繰り広げる。歌いながら、時折手拍子を誘う。

    後半は永岡が似顔絵を担当し、下敷きのような透明のアクリルボードにマジックペンで筆を走らせた。
    アクリルボードを顔の前に掲げて、顔の輪郭をなぞるように描いていく永岡。似顔絵コーナーがあると聞きつけて楽しみにしていたという利用者たちの列ができた。利用者の中には、弾き語りのリクエストをする人や、今日は似顔絵を描いてもらうと決めて並んでいた人も。
    似顔絵を描いてもらってウェブサイトに掲載したいと意気込む利用者。
    似顔絵を希望する人が続々と並ぶ。挨拶を交わして間もなくペンを走らせる永岡。
    はぁとぴあ祭には施設利用者の保護者の方も多く訪れる。似顔絵を描いてもらうのを利用者親子と職員が一緒に楽しむ様子も見られた。

    photos : Ayaka Umeda
    似顔絵が描かれる間、傍では歌と合いの手が続く。
    午後の活動
    昼休憩を挟んで再開。午後はもう一度利用者二人が似顔絵の描き手になった。
    似顔絵は一枚描き終わると、一言コメントと描き手のサインが添えられる。
    来場者の目鼻立ちの特徴を掴み、鮮やかなセーターの色を載せるなど、描いた本人たちも納得がいく仕上がりのようだった。

    地域と利用者が直接つながる方法を探りながら始められた似顔絵描き。通りすがりの人と挨拶するように似顔絵を描く日を夢見ていた。はぁとぴあ祭でその夢への具体的な一歩を進めることができた。

    2023年11月15日(水)10:00~14:00 会場:はぁとぴあ原宿

    企画実施 バナナの植え替えと岩田の企画構想

    大きな鉢に植え替えて、越冬に備えた準備をする


    9月にSHIBAURA HOUSEからはぁとぴあ原宿の屋上にやってきたバナナの苗。「苗」といっても既に3メートル近くまで成長したバナナは、小さいバケツの鉢では窮屈になったので、職員と相談し屋上の角に植え替えることになった。

    鉢から取り出すと根がぎっしりと詰まっていた。
    バナナが実ったら美味しくなるように土には沢山肥料を混ぜた。
    職員と相談し屋上の角に大きな鉢を作った。
    屋上で植え替え作業をしていると、利用者と職員が菜園の世話をしに来ることもあった。
    菜園の周りを何周も歩いて運動不足を解消する利用者たち。
    バナナの葉を手に取り、屋上で実施するプログラムを思案するアーティストの岩田(右)。
    越冬に向けて茎をばっさりとカット。断面からは水分が溢れてきた。
    職員もバナナの世話を手伝った。
    最後に鉢ごとラップで覆って、越冬の準備は完了。

    photos: Ayaka Umeda

    バナナを収穫して食べる日を夢見ている職員もいるので、無事に冬を越して春先に大きな葉が出てくることをみんなで願った。