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チュプキ 2nd

カテゴリー:プレLAND

実施年度:2023年度

    参画施設・団体

    CINEMA Chupki TABATA(シネマ チュプキ タバタ)

    目の不自由な人、耳の不自由な人、車いすの人、子育て中の人をはじめ、広く一般の人に開くユニバーサルシアター。

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    シネマ チュプキ タバタは、様々な理由で、映画館に行くことをためらってしまっていたどんな人も、安心して映画を楽しめる、ひらかれた映画館として設立。音で映画をイメージする視覚に障害のある方にも届けるため、作品に最適な立体的な音場を創っているほか、車いすスペースや親子鑑賞室を設置し、イヤホン音声ガイドや字幕付き上映を常時行っている。

    CINEMA Chupki TABATA公式ウェブサイト

    https://chupki.jpn.org/

    活動紹介

    ユニバーサルシアターに関心のある人々が集う対話の場

    映画を楽しむすべての人にとって、シネマ・チュプキ・タバタという日本で唯一のユニバーサルシアターはどのような存在なのだろうか。普段から視覚や聴覚などに障害のある人も含め、さまざまな人たちが出入りする映画館だからこそ、これからの身近な文化施設の可能性について話し合えるのではないか。そんな考えから、月に一度、ユニバーサルシアターに関心のある人々が集い、日頃の疑問や気づきを分かち合うサロンを企画した。

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    ミニシアターの運営者や設立準備中の起業家、映画監督や音声ガイド制作者をゲストに招く回などを含め、計7回実施した。手話通訳付きでプレゼンテーションを聞いたり、音声ガイド付きで作品を観る体験を通じて、アクセシビリティの考え方や、地域における文化芸術の担い手としての役割、映画業界や行政の果たすべき役割について意見を交わした。

    プロジェクトメンバー

    活動記録 チュプキサロン  

    プロジェクトの動き

    2023年

    2023年5月10日(水)14:00~16:30 会場:シネマ・チュプキ・タバタ シアター

    企画実施 チュプキサロン  vol.1

    音だけのドキュメンタリー映画の上映対話会


    シネマ・チュプキ・タバタでは、月に一度ゲストを交えて、上映におけるアクセシビリティやさまざまな可能性について探究する「サロン」を実施している。
    今年度1回目のサロンとして、全編映像なし、音だけで記録したドキュメンタリー映画『音の映画 Our Sounds』(2022年)の上映会を行った。上映後は、ブラインド・コミュニケーターの石井健介が聞き手となり、ハブヒロシ監督のアフタートークを実施。

    参加者を交えたディスカッションでは、聞こえない人、見えない人、聞こえる・見える人など、参加者のそれぞれ異なる感覚を通して受け取ったものを共有した。また、この映画をろう者に伝えるにはどうしたらいいかといったアクセシビリティのあり方についてなど、一つの作品から広がる可能性について活発な意見が交換された。

    チュプキサロン 詳細レポートvol.1 → PDFはこちら

    『音の映画―Our Sounds』ポスタービジュアル
    制作の背景を語る監督のハブヒロシさん(中央左)と進行役の石井健介(中央右)
    サロン終了後も活発な意見交換を行う参加者たち

    2023年5月21日(日)オンライン

    サロンvol.1実施振り返り

    次回のサロン企画について考えるにあたり、運営メンバーとハブ監督とで前回サロンのふりかえりを行った。『音の映画―Our Sounds』がどのような特徴を持った映画か、誰と何について話したいかなど、ディスカッションした。また、ユニークで繊細な作品だからこそ、文脈づくりや環境設定に時間をかける必要があったことを確認しあった。参加者から寄せられた疑問や違和感に応答する目的で、このふりかえりを抄録としてまとめ、参加者に共有した。(コーディネーター・舟之川)

    2023年6月7日(水)14:00~16:00 会場:シネマ・チュプキ・タバタ シアター

    企画実施 チュプキサロン  vol.2

    鑑賞体験をふりかえる


    第2回のサロンでは、前回に続いて『音の映画 ―Our Sounds』のハブヒロシ監督を招き、上映対話会の体験を参加者と共にふりかえった。
    「第一回のサロンのことについてずっと考え続けている」という参加者たちが、その大きな体験を個々の観点で小さく言語化していく中で、「『音の映画』とは一体どのような作品だったのか」が次第に立ち上がっていった。
    また、環境設定としての情報保障の面も重視しつつ、「その作品にとっての」アクセシビリティとは何かを考えることや、「”その場”に集う人たちにとっての」楽しみ方を模索することは創造的な行いであり、その際のアクセシビリティはコミュニケーションやエンターテインメントの面もある、などの話題も展開した。
    終盤では、思いを発端とする取り組みを持続的な営みにしていくにはどうすればよいか、社会の基準を底上げするためには何ができるかなど、今後のサロンに向けたテーマも生まれた。(コーディネーター・舟之川)

    チュプキサロン 詳細レポートvol.2 → PDFはこちら

    オンラインで参加する監督のハブヒロシさんとシネマ・チュプキ・タバタ代表の平塚千穂子(左)、進行役の石井健介(右)  
    終了予定時刻を過ぎても話題は尽きず、熱を帯びて発言する参加者たち 

    2023年6月15日(木)13:00~15:00 会場:シネマ・チュプキ・タバタ

    企画構想会議1   TalkTreeWORKSHOP®

    ツリー(Talk Tree)を作りながら今年度の活動を考える


    5月から「チュプキサロン」をスタートした、シネマ・チュプキ・タバタ。プロジェクトの方向性を改めて見直すことと主要メンバーのチームビルディングを兼ねてTalkTreeWORKSHOP®(※)を実施した。チュプキからの参加者は、チュプキサロンを運営するメンバーでもある、平塚千穂子(チュプキ代表)、石井健介(ブラインド・コミュニケーター)、舟之川聖子(コーディネーター)、吉川真以(コーディネーター)の4名。

    昨年度のプログラムを振り返って出てきた言葉は、「出会い・交流・対話・発展」「考える時間が持てた」「やったことが形になる・自分が関われる」など。活動を通しての変化として、「ケアとは何か?配慮とは何か?を考えるきっかけになった」「息抜きになっている」「みんなの才能が開花する予感」といった、普段の仕事の枠外の活動だからできる自由や、活動の広がりを感じさせる視点が共有された。
    それぞれが思う「社会課題」についての問いには、「政治不信・分断・無関心」「孤立・ぼっち・鬱」「経済格差」「(ジェンダー・国籍・障害者などの)フェアネス」など、社会や福祉の根底にある幅広い問題が次々に列挙された。

    チュプキ代表の平塚千穂子(左)とコーディネーターの舟之川聖子(右)。
    それぞれのテーマから連想した言葉を書き出し、付箋をツリーに貼っていく。
    コーディネーターの吉川真以(左)とブラインド・コミュニケーターの石井健介(右)
    「理想の社会」を記す青の付箋には、「理解ある社会」「物質的ではない幸福」「戦争がない」「子供が生き生きとした社会」「命を大切にする」などが書かれた。

    TURN LANDプログラムでやりたいことは?という質問には、「ラップ」「コメディグループ」「映画」をつくるといった具体的なアイデアから、「みんなで文化をつくる」「参加者も表現できる場をつくる」など、活動で大切にしたい点が共有され、映画館という文化施設だからこその可能性について話が拡がった。

    ※ TalkTreeWORKSHOP®は、組織や人を1本の木に見立て、自分たちの活動が誰のために、何のためにあるかについて考え、積極的なコミュニケーションを促すことを目的としたもの。Talk Treeを考案した加藤未礼がファシリテーターを務め、今年度のプログラム参画施設・団体でそれぞれ実施している。

    2023年7月5日(水)14:00~16:30 会場:シネマ・チュプキ・タバタ シアター

    企画実施 チュプキサロン  vol.3

    なぜ、いま映画館をつくるのか


    チュプキサロンにキックオフ(2023年2月、3月開催)から継続参加している今井健太さんをプレゼンターに招き、今井さんが現在大宮で設立準備を進めている、ユニバーサル上映を視野に入れたミニシアターの構想を聞いた。その後、今井さんの話をふりかえりながら全体で対話を行った。毎回参加しているレギュラーメンバーのほか、これから映画館を作りたいと活動している方、映画館を運営している方、映画館を応援している方も招待した。

    映画館設立の計画を語る今井健太さん(左)とファシリテーターの石井健介(右)。
    アイディアを話す参加者。活発なやり取りが続く。

    参加者からは、持続可能な経営のためにユニークな複合施設を発想した背景、まちの文脈や文化を守り、次世代に手渡すという思い、経営の仕組みづくりや資金調達、異業種から参入しているからこそ見えた映画産業の課題など、幅広いトピックについて質問やコメントが寄せられた。映画館の設備や運営に関するアイディアも対話の場に持ち込まれ、新しい映画館の誕生を皆で盛り立てていくことの喜びを交わす回となった。(コーディネーター・舟之川)

    チュプキサロン 詳細レポートvol.3 → PDFはこちら

    2023年7月13日(木)、7月27日(木) オンライン

    実施振り返り

    折り返し地点に立って


    ここまで、まずは枠にとらわれずにやってみようということで実施してきた。3回の実施がちょうど折り返し地点ということで、運営の4名でこれまでのチュプキサロンを振り返る機会を持った。役割や作業量、今後の実施方針、モチベーションや余力等、各自の考えをざっくばらんに話し合い、定期的な場をつくっていくために必要な項目を確認した。スケジュールも大まかに決め、8月は一度ブレイクを入れて、9月から仕切り直し、12月までは月に1回、全体で計7回開催することになった。(コーディネーター・舟之川)

    2023年9月6日(水)14:00~16:00 会場:シネマ・チュプキ・タバタ シアター

    企画実施 チュプキサロン vol.4

    みんなが楽しく安心して住めるまちを映画館から考える


    前回サロンの今井さんの発表にあった「まちづくりを考えていたら映画館を発想した。まちにどんな映画館があればみんなにとってよいだろうかと考えた」という流れを受けて、映画館とまち(およびそこに暮らす人)との関係を深掘りすることにした。プレゼンターは立てず、冒頭から参加者にマイクを回す形でテーマについて対話を展開した。
    参加者として、レギュラーメンバーのほか、沖縄でミニシアターを経営する方と、バリアフリー字幕や音声ガイドを制作する企業の方を招待した。

    冒頭のアイスブレイクでは、事務局スタッフもサロンの一員として、名前とひと言コメントで参加する。
    自分と映画館との関わりについて記憶を辿る。
    映画料金の区分についてコメントする参加者。
    沖縄市でミニシアター「シアタードーナツ」を営む宮島真一さんを囲んで。

    進行の石井からの「どんなまちなら安心して楽しく暮らせるか」や「どんな映画館がまちにあったらいいか」の問いかけに対し、映画館の利用者や生活者の立場から参加者が応答。次第に、映画館ならではの鑑賞体験、ミニシアターとシネコン各々の特徴、既存のサービスから”こぼれる人”のニーズ、鑑賞マナー喚起のあり方などについて、映画館の現場や、さまざまな課題や困難を抱える当事者から見える風景も聞きながら、対話が深まっていった。映画館と人とまちと社会とがどのようにつながっているか、映画館という施設がどのような役割や使命を負っているのかをあらためて考える回となった。(コーディネーター・舟之川)

    チュプキサロン 詳細レポートvol.4 → PDFはこちら

    2023年10月4日(水)14:00〜16:30 会場:シネマ・チュプキ・タバタ シアター

    企画実施 チュプキサロン vol.5

    テーマ:ミニシアターから考える“新しい公民館


    前回の参加者からシェアされた「公民館」という言葉をヒントに、藤沢市で「映画と本とパンの店 シネコヤ」を経営する竹中翔子さんをプレゼンターに招き、地元の福祉施設さんわーくかぐや(*)を舞台にした映画「かぐやびより」の上映がきっかけとなって地域の交流が生まれた事例などを伺った。
    参加者として「かぐやびより」を監督した津村和比古さんをお招きしたほか、都内で週末のみの上映スペースを運営する方なども加わった。

    *さんわーくかぐや 統合失調症などの精神障害、自閉症スペクトラムなどの発達障害、あるいは一般社会に馴染めなかったり、生きづらさを感じている人たちのための藤沢市にある日中一時支援施設

    シネコヤ店主・竹中翔子さん(左)、『かぐやびより』監督・津村和比古さん(左から二人目)
    沖縄からオンラインで参加の宮島さん(シアタードーナツ代表)に挨拶する参加者たち。

    photos: Ayaka Umeda
    恒例の交流タイム。TURN LANDプログラムの他のプロジェクトメンバーのアーティストも参加した。

    映画+αの新しいスタイルの映画空間をつくる中で、自然発生的に地域のつながりが生まれたという竹中さんの発表から、施設側からの働きかけと地域の人たちから持ち込まれることの相互作用によって、映画館が居場所や出会いや学びの場になっている実践例が共有された。参加者からは、「文化芸術の担い手であり、小規模なビジネスを営む身として、独自の組み合わせやつながりを強みにしながら目指す社会を描く姿勢に共感を覚える」などのコメントがあった。(コーディネーター・舟之川)

    チュプキサロン 詳細レポートvol.5 → PDFはこちら

    2023年10月12日(木)オンライン

    実施振り返り

    エンディングに向けた打ち合わせ


    運営チームでは、毎回サロンの前後で振り返りと企画の話し合いを持っている。プレゼンターがいる回はその方とも打ち合わせをし、頻繁にやり取りをしながら、チュプキサロンという場をつくってきた。残りの開催があと2回となるこのタイミングの話し合いでは、これまでのサロンで培った対話の土壌をベースにした、より核心に迫るテーマを連続して扱うことで、今年度のサロンの締めくくりとする方向性を確認した。(コーディネーター・舟之川)

    2023年11月8日(水)14:00~16:30 会場:シネマ・チュプキ・タバタ シアター

    企画実施 チュプキサロンvol.6

    テーマ:ユニバーサルシアターの未来①


    チュプキサロンでは、アクセシビリティやまちづくりなど、さまざまな切り口からユニバーサルシアターの「場の意義」について対話を重ねてきた。その中で毎回挙がってきた「ユニバーサルシアターが抱える課題」について正面から扱うべく、前半は、シネマ・チュプキ・タバタ代表の平塚千穂子とスタッフの柴田笙がプレゼンターとなり、チュプキの経営面の課題を具体的な数値も示しながら説明した。後半は参加者も交えて、何がその課題を作っているのか、日本でもっと常設のユニバーサルシアターが生まれるためには何が必要か等について考えた。
    今回のサロンには、音声ガイド制作者、ラジオ構成作家、キュレーター、ミニシアターや上映スペースの経営者など常連メンバーが揃った。

    映画チケット収入だけでは経営が成り立たない産業構造の中で、全上映作品にバリアフリー字幕と音声ガイドをつけるユニバーサルシアターは、経営面でより厳しい状況下にある。その理由として音声ガイド制作への公的助成の不足や、社会的認知の低さも背景として挙がった。経営や運営の効率化の論理だけに絡め取られず、どのように文化芸術を守るのか。担い手同士でつながりながら、大きな社会構造に対して諦めずに行動していこうという声もあり、各々が当事者としてこの問題提起を切実に受け止めていた。(コーディネーター・舟之川)

    チュプキサロン 詳細レポートvol.6 → PDFはこちら

    発表する平塚(左)に内容の確認を入れながら進行するファシリテーターの石井(右)。
    参加者から他の参加者に対してコメントを求める姿もよく見られる。
    顔馴染みになった参加者同士。サロン外でのコラボレーションも進んでいる。

    2023年12月6日(水)14:00~16:30 会場:シネマ・チュプキ・タバタ シアター

    企画実施 チュプキサロンvol.7

    テーマ:ユニバーサルシアターの未来②


    最終回は、音声ガイドのディスクライバーとして革新的な作品を生み出している和田浩章さんと、日本映像翻訳アカデミー株式会社で音声ガイドやバリアフリー字幕の制作統括を担う小笠原尚軌さんをプレゼンターに招き、主に映画配信における作品制作の現状と業界の今後についての話を二人の対談形式で聞いた。また、実際の映像作品をスクリーンに投影しながら、制作上の工夫についても聞いた。
    その後の全体対話では、海外の音声ガイド制作に携わる参加者から、AI技術の導入状況やプロセスの違いについて、また、ろう者や視覚障害のある参加者から、ユーザーとしての使い心地についてのシェアがあった。さらにAI技術をコストカットのみを考えて導入すると、作品の芸術性を損う懸念がある一方で、情報保障の面ではより多くの作品がカバーされ、ユーザーの選択肢が広がるという期待が持てること。また、ユニバーサルデザインの発想からのツールや設備の開発によって、誰にとっても未知の映画体験が今後生まれることなど、未来に向けた明るい見通しがいくつも示された。

    ゲストの小笠原尚軌さん(左)と和田浩章さん(右)。
    ファシリテーターの石井(右から3人目)、シネマ・チュプキ・タバタ代表の平塚(左から2人目)も混ざって、会場の参加者と話す。
    チュプキサロンを開催したシネマ・チュプキ・タバタ。

    最後は、シネマ・チュプキ・タバタ代表の平塚が、「それぞれの人が命を持って生きているからこそ、制作や環境づくりに思いが生まれる。さまざまな困難はあるが、芯を持って、人と文化の豊かさを一緒に大事にしていきたい」と締めくくった。参加者からは、「毎回多くの学びがあり、刺激的な時間を過ごせた」「貴重な場。ぜひ継続を」などの声が寄せられた。(コーディネーター・舟之川)

    チュプキサロン 詳細レポートvol.7 → PDFはこちら