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くるみの木・みかんの木 2nd

カテゴリー:プレLAND

実施年度:2023年度

    参画施設・団体

    放課後等デイサービス くるみの木・みかんの木

    知的障害児・肢体不自由児を対象に、日常生活訓練や、集団での療育を行っている施設。

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    くるみの木・みかんの木は、杉並区にある放課後デイサービス。養護学校や特別支援学級のこどもたちを対象に、日常生活訓練や、集団での療育を行うほか、創作的活動、作業活動などプログラムを工夫しながらのサービスを提供している。

    一般社団法人くるみの会 公式ウェブサイト

    http://kuruminokai.jp/

    活動紹介

    サルサで通じ合う喜びを実感

    今年度初めて参画した〈くるみの木〉ではサルサダンスの会を2回、昨年サルサダンスを経験している〈みかんの木〉ではキューバ人のパポとの交流会を2回開催した。〈くるみの木〉ではテンションが高くなりがちな子もいるので楽器は持ち込まずに踊りだけの開催にすることにした。身体が思うように動かせない子もいるので職員たちは不安もあったが実際にやってみるとこどもたちは音楽を通じたコミュニケーションさまざま々な形で関わろうとする積極的な姿勢も見受けられた。

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    また、サルサと出会ったことで、サルサを習ったことがある職員がいることや、施設長も青春時代はダンスに夢中だったことが分かり、ダンスによってこどもも大人も新たな一面が見え関係性がほぐれた。〈みかんの木〉のパポとの交流会ではキューバのこどもがやる手遊びを教わり、みんなで盛り上がった。こどもたちがその思い出と共に時折やる「ゴリラの真似」がなんの遊びか保護者にもわかるように、スペイン語の手遊び動画を職員たちとユミ(ダンサー)で作成し、その動画を保護者と共有した。

    活動記録 サルサ大好き  

    プロジェクトの動き

    2023年

    2023年6月20日(火)10:45~12:10 会場:くるみの木

    企画構想会議   TalkTreeWORKSHOP®

    ツリー(Talk Tree)を作りながら今年度の活動を考える


    昨年度、みかんの木で実施したパポとユミによるサルサのダンスワークショップの様子にくるみの木の施設長が感銘を受け、今年度は同法人が運営するくるみの木でもTURN LANDプログラムの活動をおこなうこととなった。今年度の活動を考えるために、くるみの木とみかんの木の職員が合同で「TalkTreeWORKSHOP®」(※)を実施した。
    昨年度のプログラムについて職員からは、「(こどもたちに)新しい風を感じてもらった」「自分自身の体がリフレッシュした」「車椅子を利用する子が多く、身体を動かしにくい子もいるなか、それぞれの関わり方で楽しそうに参加する様子が印象的だった」などの声があがった。課題意識についての問いでは「地域と関わる機会をどうつくれば良いか」「障害の違いによってできる活動が異なる」など施設が抱える課題があがり、その上で「地域で孤立しない」「障害者が特別の世界に置かれない」といった、理想の地域像が共有された。

    Talk Treeワークショップでは、一人一人にカラフルな付箋が配られ、コメントを書いてツリーに貼っていく。
    黄色い付箋にはTURN LANDプログラム参加後の変化を、茶色い付箋には「障害児に関心が薄い。変化の兆しは感じるが、障害児の姿が目に留まらない様子」といった地域での課題が貼られた。
    オレンジ色のTシャツを着ているのが本橋和哉(くるみの木施設長)、その隣が齊藤果(みかんの木施設長)。
    くるみの木とみかんの木の職員が合同で企画会議をするのは今回が初めて。施設ごとの障害特性や課題が浮き彫りになった。

    これからの活動について、「昨年度に続きサルサダンスを通して、こどもたちが楽しい時間を過ごし、保護者にもこどもたちの可能性を知ってほしい」という意見がみかんの木とくるみの木の両方からあがった。保護者や地域の人など身近な人に、こどもたちの新たな一面や可能性を届けることを目標に、TURN LANDプログラムに取り組んでいきたいという想いを共有する機会となった。

    ※ Talk Treeワークショップは、組織や人を1本の木に見立て、自分たちの活動が誰のために、何のためにあるかについて考え、積極的なコミュニケーションを促すことを目的としたもの。Talk Treeを考案した加藤未礼がファシリテーターを務め、今年度のプログラム参画施設・団体でそれぞれ実施している。

    2023年8月9日(水)・23日(水)14:30~16:30 会場:みかんの木

    企画実施 サルサ交流会(みかんの木)

    パポを迎え、サルサやキューバの手遊びを通してこどもたちと交流


    「みかんの木」では普段施設にこもって活動することが多いこどもたちにできるだけ多様な経験をさせたいという想いから、肌の色も言語も違うダンサーでミュージシャンのヤネス・パポ単独で、サルサ交流会を実施することにした。

    8月9日は、久しぶりのパポの訪問を、職員やこどもたちが手作りのウェルカムボードを用意して歓迎するサプライズから始まった。続いて施設長の齊藤がパポに「好きな音楽は何?」「キューバに手遊びはある?」「『大好き』ってキューバ語でなんて言う?」など、質問しながらこどもたちとパポの交流を促した。パポの好きな曲が『風になりたい』だとわかると、みかんの木で作ったオリジナルの歌詞でその歌を合唱して盛り上がった。
    その後はパポがサルサ、チャチャチャ、ルンバなどの曲をかけながらリズムをとって、みんなでダンス。あるこどもはパポの側を離れずじっと様子を見ていたり、去年は泣いていたこどもが今回は泣かずに自ら近づいていったり、普段は寝てしまうというこどもも音楽が流れると目を開いてリズムをとったりして楽しんだ。

    8月23日は、「キューバの手遊びをやってみたい」という前回の齊藤からの提案にパポが応えるかたちで手遊びをすることに。施設では9日の交流会でパポに教わったキューバの動画を、普段もずっと流していたようで、こどもたちは馴染んだ様子で手遊びを満喫。サルサで踊る時間では、好きな音楽がかかるとリズムにのって踊るこどもも増えた。「次はいつ来るの?」とこどもたちがパポに質問するなど、サルサの時間がこどもたちの楽しみになっている様子が伝わってきた。交流会の終わりには、職員とこどもたちからの「Me gusta mucho!(大好き)パポさん!」の声が響いた。

    「ようこそパポさん」と書かれた手作りのウェルカムボードの前でサルサのリズムをとるパポ。

    パポのそばで動きを見ているこどもや、車椅子に乗りながら手や首を振ってリズムをとるこどもなど、それぞれの参加の仕方でダンスを楽しんでいた。
    積極的にキューバの手遊びを真似てみるこどもの様子。
    職員も一緒にこども一人ひとりの動きに合わせて動く。
    手拍子でテンポを取ってこどもたちに伝えていく。
    動きを伝えると、そばに寄ってきて動きで応えるこどもたち。
    こどもたちに呼びかけながらリズムをとるパポ。

    Photos: Ryohei Tomita
    キューバの動画を流しながら遊びを伝えた。

    職員の一人がサルサを習っていたことがわかったり、施設長も日常的にサルサを聴くようになったりと、すっかりサルサが身近になっている様子。昨年度はアーティストが提案するプログラムを受け入れる形での実施だったが、今年度からは職員がプログラム内容を考え、アーティストに質問したり提案したりする形で進めていくことができたのは運営面での大きな成果だった。

    2023年8月17日(木)・22日(火)14:00~16:00 会場:くるみの木

    企画実施 サルサダンスワークショップ(くるみの木)

    パポを迎え、サルサやキューバの手遊びを通してこどもたちと交流

    昨年度サルサダンスの会を実施したみかんの木に続き、アーティストユニット・パポとユミとのプログラムを試みるくるみの木。通ってくるこどもたちが曜日ごとに異なるので、パポとユミと出会う日を同じ週に2回設けた。

    初めてサルサ音楽に触れ合うので、8月17日の1回目はどんな形で始まるのか職員が緊張していた様子。その雰囲気を感じてか、集まったこどもたちも緊張気味に待機していた。車椅子に乗ったこどもが6人、自立歩行できるこどもが3人参加。パポとユミが軽く挨拶をして音楽を流しても、こどもたちはなかなか動き出さなかった。そのうち、ユミが音楽に乗ってこどもたちや職員に接し始めると、少しずつ緊張がほぐれる。
    パポの繰り返す動きに合わせて職員がリズムに乗りだすと、音楽が大好きなこどもたちも次第に動き始めた。後半は、職員が車椅子をリズムに合わせて揺らしたり、自立歩行できない子を抱えながらリズムに乗せていくことで、パポの速いリズムカルな動きを真似するこどもも現われた。こども同士が互いに見合うように楽しむ様子も出てきて、施設内はサルサの軽快なテンポに包まれた。

    8月17日
     
    手足でリズムをとっている様子が互いに伝わる。

    パポに合わせてステップを踏んでみる。車椅子を使っているこどもの足を職員が補助して、こども同士がダンスで向き合う。
    両腕を振ってポーズを決めるように動きをつけていく。だんだんとこどもたちも職員も踊り出す。
    こどもたちに職員が寄り添い、それぞれ組むように手をつなぎ合って、サルサ音楽を力一杯楽しむ。
    パポが1,2,1,2と足踏みをするようにリズムを刻み、みんなでステップを繰り返していく。
    ユミが手を取ると、動きが大きくなり全身でリズムに応えるこどもたち。
    音楽にのって、車椅子の上で跳ねるような勢いで踊る。
    パポと向き合って、ノリノリな表情を見せるこどもたち。

    8月22日は、職員は緊張感がほぐれた様子でパポとユミを迎えた。こどもたちもパポが使うスピーカーの周りを興味津々に見て回ったり、音楽がかかる前から動き出しそうだったりする様子。一方では、お気に入りの絵本を持って壁の脇に座り続けているこどももいる。そのような中、車椅子を使っているこどもたちがフロアを囲むようにして、サルサタイムが始まった。車椅子を前後に動かしたり、手をつないだり、足をさすったり、それぞれのこどもが動かせる範囲でパポとユミとリズムを共有していく。
    20分以上音楽を止めずにダンスを続けたところで一時休憩。5分ほど飲み物休憩をとったのちに音楽をかけて、ダンスを再開。マカレナなどテンポの速いものもパポが次々に流していく。あちこち動き回り自分のポーズをとるこどももいれば、目を閉じたり、職員に近づいてまた少し動き出したり、座って絵本のページを開いたまま時々周りの様子を見たりするこどももいて、さまざまに楽しむ。

    終盤にパポが「おもちゃのチャチャチャ」を流し、「キラキラお星さま〜」という歌詞に手をヒラヒラかざす振りをつけると、活動中じっと座って見ていた子が一緒に動きを真似し始めた。パポとユミが最後のアンコール曲をみんなに訊ねた時も、その子から「おもちゃのチャチャチャ」が良いとリクエストがあり、全員で踊った。

    ステップを踏みながら、パポと息を合わせて腕の振りもつけていく。

    Photos: Ayaka Umeda

    このプログラム実施の週は夏祭り期間ということもあって、テンションが上がっているこどももいれば、疲れているこどももいたとのことだったが、こどもたちの全身から表情を感じられる時間だった。職員からは、「普段見ないこどもたちの様子が見られて良かった」、「普段は暴れて他の人を傷つけてしまう子たちも、相手に対して優しく触れたりすることに驚いた」と感動したことが感想に挙げられた。